【2026年最新】永住許可の要件はどう変わる?ガイドライン改定案を行政書士が解説|「厳格化」について海外駐在経験から考える

2026年8月、出入国在留管理庁は「永住許可に関するガイドライン改定案」を公表し、パブリックコメント(意見募集)を開始しました。

今回の改定案では、永住許可について、収入・年金、日本語能力、日本の制度・ルールへの理解、子どもの就学、法令遵守、公租公課の支払い、日本国への利益・貢献など、審査において考慮される事項が、これまで以上に具体的に示されています。

そのため、「日本の永住許可が大幅に厳格化されるのではないか」と関心を持っている外国人の方や外国人を雇用する企業も多いのではないでしょうか。

私は行政書士として外国人の在留資格に関する業務に携わっていますが、今回の改定案については、単純に「外国人にとって厳しくなった」とは考えていません。

なぜなら、私自身が長年にわたり海外の複数の国・地域で、日本人でありながら「外国人」として働き、生活してきた経験があるからです。

その経験も踏まえ、今回の永住許可ガイドライン改定案について考えてみたいと思います。


2026年の永住許可ガイドライン改定案とは

今回の改定案では、「永住者」の在留資格について、

在留活動及び在留期間の制限がなく、生涯を日本で過ごすことが想定される最も安定した法的地位

であるという位置付けが明確にされています。

そのため、永住許可については特に慎重な審査を行う必要がある、という考え方です。

これは非常に重要なポイントです。

永住許可は、単に「日本に長く住んだ外国人に与えられる資格」というものではありません。

永住許可を受ければ、原則として在留期間の更新が不要となり、就労活動についても在留資格による制限を受けない、極めて安定した在留資格となります。

そのため、日本で将来にわたり生活の本拠を置く外国人に対して、一定の条件を求めること自体には合理性があると考えます。


今回の永住許可要件の主な変更ポイント

改定案では、主に次のような事項が永住許可の審査における考慮要素として示されています。

1.収入・独立生計要件

申請者が現在だけでなく将来においても自活し、安定した生活を維持できることが重視されます。

具体的には、原則として申請者の属する世帯年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているかが考慮されます。

したがって、今後の永住申請では、「現在いくら収入があるか」だけではなく、継続性や世帯全体の生活基盤も重要になります。

2.将来の年金受給見込額

今回、新たに注目すべきなのが年金です。

申請者の年齢、年金加入期間、これまでの働き方や平均年収、現在の収入などから、将来受給できる年金額を推計して評価する考え方が示されています。

一定水準に不足する場合には、金融資産による補填も考慮するとされています。

つまり、永住申請直前だけ社会保険を整えればよいのではなく、日本でどのように働き、社会保険制度に加入してきたかという長期的な履歴が、より重要になると考えられます。

3.日本語能力「B1相当」

日本で長期間生活し、地域社会に円滑に適応するため、一定水準の日本語能力も考慮されます。

具体的には、原則として**「日本語教育の参照枠」のB1相当以上**の日本語能力を有しているかが考慮要素とされています。

一定の例外も予定されていますが、日本語能力が永住許可の審査において明確に位置付けられたことは、大きな変更点といえます。

4.日本の制度・ルールへの理解

日本語だけではありません。

日本の生活・就労に関する制度やルールについて一定水準以上理解しているかも確認する方向が示されています。

外国人が日本で長期間生活する以上、日本の法律や社会制度、生活上のルールを理解することを求める考え方です。

5.税金・社会保険・法令遵守

所得税、住民税等の税金だけでなく、健康保険や年金などの公的負担を適切に履行していることも重要になります。

また、現在未納がないというだけではなく、過去の履行状況についても審査上考慮される可能性があります。

6.子どもの就学

申請者が義務教育年齢の子どもを養育している場合、子どもが小学校・中学校に通学しているかどうかも考慮要素とされています。

これは、外国人本人だけでなく、家族全体が日本社会にどのように定着しているかを見る考え方ともいえます。


永住許可の「厳格化」に私は基本的に賛成です。

今回の改定案について、「永住許可が厳しくなりすぎるのではないか」という意見もあります。

私は、少し違った見方をしています。

私は行政書士になる以前、複数の国・地域に長期間駐在し、日本人である私自身が現地では「外国人」として働き、生活してきました。

その経験から考えると、永住という非常に安定した法的地位を取得しようとする外国人に、

経済的に自立すること

税金や社会保険を適切に納めること

法律や社会のルールを守ること

一定の言語能力を身につけること

受入国の制度や生活習慣を理解すること

その国の社会の一員として生活し、貢献していくこと

を求めること自体は、決して過度な要求だとは感じません。

したがって、私は今回の永住許可制度の見直しの方向性には、基本的に賛成です。


永住は「長く住んだから取得できる資格」ではない

私は、永住資格について、

「日本に長く住んだから取得できる資格」

という考え方から、

「日本で生活し、働き、学び、成長した先に取得する安定した法的地位」

という考え方へ転換していくことには合理性があると思います。

日本に入国した当初は日本語が十分に話せなかったとしても、日本で働きながら日本語を学ぶ。

仕事の能力を高め、キャリアアップする。

それによって所得も向上する。

税金や社会保険を適切に納める。

日本の法律や社会のルールを理解する。

家族とともに日本社会に適応していく。

そして最終的には、日本社会を支える側になる。

その延長線上に「永住」という安定した在留資格がある。

私は、そのような制度の考え方自体は非常に自然だと思います。


ただし、外国人だけに責任を求めてはいけない

一方で、今回の改定案について私が重要だと考えていることがあります。

外国人側に、

「自立してください」

「日本語を勉強してください」

「日本のルールを理解してください」

「キャリアアップしてください」

「日本社会に適応してください」

と求めるのであれば、外国人を受け入れる日本側にも責任があるということです。

外国人を日本に受け入れた後は本人任せ。

そして10年近く生活した後、永住申請をした段階になって突然、

「日本語能力が足りません」

「収入が足りません」

「年金が足りません」

「日本の制度への理解が不足しています」

と言われても、本人にとっては簡単に改善できるものではありません。

特に、キャリア、所得、年金、納税・社会保険、日本語能力などは、短期間で作れるものではありません。

数年間の積み重ねが必要です。


日本は外国人に「永住までのロードマップ」を示すべき

今回のガイドライン改定案には、非常に重要な言葉があります。

それが、

「永住許可の可否の予見可能性を高める」

という考え方です。

私は、この「予見可能性」をもっと具体化する必要があると考えています。

外国人が日本に入国した比較的早い段階から、

日本語を学ぶ

日本の法制度・生活ルールを理解する

安定して就労する

職業能力を高める

キャリアアップする

所得を向上・安定させる

税金・社会保険を適正に履行する

家族とともに日本社会に定着する

永住資格を取得する

という「永住までのロードマップ」が見える制度にするべきではないでしょうか。

外国人本人が、

「日本で何を努力すれば、5年後、10年後にどのような将来があるのか」

を理解できることが重要です。


外国人には「成長する責任」、日本には「成長させる責任」

私は今回の制度改定について、この双方の責任が重要だと考えています。

外国人には、日本社会の一員となるために、自立し、学び、ルールを守り、成長する責任を求める。

同時に、

日本側には、その成長への道筋を明確に示し、教育・指導・キャリア形成の機会を提供する責任を求める。

この双方があってこそ、本当の意味での「秩序ある共生」が実現するのではないでしょうか。

外国人の受入れ政策は、「何人受け入れるか」だけで終わる問題ではありません。

「受け入れた外国人が、その後どのように日本社会の一員として成長していくのか」までを制度として考えることが重要だと思います。


「日本国への利益・貢献」も予測可能な基準に

今回の改定案では、国益要件について、単に「日本の国益に反しない」だけではなく、外国人の永住が日本国に積極的・具体的な利益をもたらすことを求める考え方が示されています。

この方向性についても、私は理解できます。

ただし、「日本への貢献」という言葉が抽象的なままでは、外国人本人は何をすればよいのか分かりません。

日本への貢献は、特別な賞を受賞したり、大企業の経営者になったりすることだけではないはずです。

例えば、

・長期間まじめに働く
・税金や社会保険を適切に負担する
・職業能力を高める
・企業で人材を育成する
・地域社会に参加する
・子どもを教育する
・日本人と外国人の橋渡しをする
・事業を通じて雇用を生み出す

こうした日常的な活動も、日本社会を支える重要な貢献ではないでしょうか。

通常の外国人が継続的な努力によって到達できる形で、「日本社会への貢献」の考え方をより具体的に示すことが必要だと考えます。


厳しいか、緩いか。それ以上に重要なこと

今回の永住許可ガイドライン改定について、私は、

「厳しくするべきか」

「緩くするべきか」

という二者択一だけで議論するべきではないと思います。

重要なのは、その基準が、

透明であること。

予測できること。

そして、外国人本人の努力によって到達可能であること。

です。

外国人にルール遵守と自立を求めることには合理性があります。

しかし、その基準は外国人本人が事前に理解し、自ら努力して到達できるものでなければなりません。


永住申請は「申請するとき」に始まるのではない

今回の改定案を見て、これから永住許可を目指す外国人の方に、行政書士として特にお伝えしたいことがあります。

それは、

「永住申請は、申請書を提出するときに始まるのではない。数年前から始まっている。」

ということです。

永住申請の直前になってから、日本語能力、収入、年金、税金、社会保険、家族の生活状況などを一度に改善することはできません。

だからこそ、

「あと何年日本に住めば永住申請できるか」

だけではなく、

「数年後の永住申請に向けて、今の自分には何が足りないのか」

を早い段階から確認しておくことが、これまで以上に重要になると考えます。


グエン行政書士事務所の考え方

グエン行政書士事務所では、在留資格の申請を単なる「書類作成」として考えるのではなく、その外国人の今後の日本での生活やキャリアも含めて考えることが重要だと考えています。

特に永住許可については、申請直前の書類だけを見るのではなく、

現在の在留資格、在留期間、収入・就労状況、税金・社会保険、日本語能力、家族状況などを整理し、将来の永住申請までに何を準備する必要があるのか

を早い段階から確認することが重要です。

今回のガイドライン改定を機に、外国人本人、外国人を雇用する企業、そして行政が、「永住許可の申請」だけではなく、**「永住までのプロセス」**を考える必要があるのではないでしょうか。


公式資料・パブリックコメント

今回の「永住許可に関するガイドライン改定案」については、e-Govでパブリックコメントが実施されています。

e-Gov「永住許可に関するガイドライン改定案に係る意見募集」

出入国在留管理庁「『永住者』の適正化に係るパブリック・コメントの実施について」

パブリックコメントの募集期限は**2026年9月3日(必着)**です。

制度改定に関心のある方は、ぜひ改定案の原文を確認した上で、ご自身の立場から意見を提出されることをお勧めします。


※本記事は2026年9月2日時点で公表されている「永住許可に関するガイドライン改定案」に基づく解説及び当事務所の見解です。今後、パブリックコメントを経て最終的な内容が変更される可能性があります。実際の永住許可申請については、最新の法令・ガイドライン及び個別事情をご確認ください。

グエン行政書士事務所

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です